2017年12月1日金曜日

もしも就活するならば


フィリピンの、それも一般日本人には馴染みのないネグロス島なんかに移住したら、日本人を会うこともなくなり、2〜3年もしたら日本語を忘れちゃうんじゃないかと、移住前には本気で考えていました。

することがなくて、毎日暇を持て余すだろうから、WOWOWで大量の映画を録画してDVDに保存し、数千冊の蔵書を船便で運び、万全の時間つぶし対策。ところが実際は、意外にも毎日することはいくらでもあります。

まずは、だいたい2日に一度更新している、このブログ。思いつくまま書きなぐっているように見えるでしょうけど、これでも文章化の作業は、数時間は要します。そして、毎日の食事の用意と子供の送り迎え。最近ではイラスト描きが新たな日課。イラストの方は私の性格なのか、回を追うごとに凝ってきて、当初は1週間に1枚ペースだったのに、今では完成に10日から2週間。

考えてみると、どれも自分一人で完結する事ではなく、全部誰か相手がいる仕事。食事など、一人暮らしだったら絶対長続きしなかったでしょう。特にフィリピンなら、料理ができるメイドさんも雇えるので、間違いなく何もかもお任せになっていたと思います。

そしてブログにしてもイラストにしても、拙い内容にもかかわらず、毎回楽しみにしていると言ってもらえるのが嬉しくて、つい夜更かしして作業に没頭したり。さらに広告料の名目で、グーグルからお小遣いまで。これは辞める理由を探す方が難しい。

加えてまったく予想外に、日本人の新しい友達が増えています。以前にも書いたように、このブログが橋渡し。マニラ・セブほどではないけれど、バコロドやドゥマゲテを擁するネグロス島には、日本のNGO活動や英語留学で、毎年相当な数の若い日本人がやってきます。そんな人たちが、私のブログを目敏く見つけて、連絡してくれる。

事前にメールのやり取りやチャット・SNSで、人となりやネグロス渡航の理由をお知らせいただいて、気が合いそうな人は、我が家にご招待するパターン。学生さんだったり、大学卒業して間がない若者のこと。食事やお茶をご一緒しながらの話題は、就職関係になることが多い。

留学にしろインターンにしろ、わざわざ海外の、しかもこんな辺鄙な島まで来るぐらいだから、日本国内限定で仕事を探す人はあんまりいません。日本の会社に勤めるにしても、やっぱり海外関連業務を視野に入れている人がほとんどな印象。

もし私が、今二十歳そこそこだったら、どんな進路を選んだでしょう。私が就職した1980年代は、大企業に入るのが確かな道と考えるのが一般的。私も某大手家電メーカーに、工業デザイナーとして入社しました。

1990年代末までは、この選択の利点は実に大きくて、自分の手がけた製品が店頭に並ぶのを見る喜びを味わい、海外担当に抜擢されたことで、東南アジア・中国・欧州・米国など二十数ヶ国での仕事を経験しました。結果的に生涯の伴侶と出会いにも繋がった。

しかしその後は、まったく状況が変わりました。2000年を過ぎた頃から、中国・韓国メーカーの台頭で、どんどん商売が難しくなり、お客さんが喜ぶものより、メーカー側が持っている技術を使って作れるものという、本末転倒な議論に費やす時間が増え、物事がなかなか決まらない。決断が遅れるうちに、ライバルは次々に新アイデアを商品化し、後追いになる悪循環。

それでも1960〜70年代の成功体験から抜け出せない日本企業が多く、その結果が年間数万人の自殺者と、報酬の伴わない長時間労働。これは皆さんよくご存知の現実。日本にいる限りスケールメリットは、ほぼなくなったと言ってもいいでしょう。

ならば、まずは自分が好きなこと、ワクワクできる職種・職場を最優先にするべき。安定感や規模の大きさだけで選ぶと、必ず後悔します。できそうなことより、やりたいことが大事。好きなことができて、大きな会社だったら言うことはないですが、そんな虫のいい条件は、ある程度の実績がないと難しい。

日本に留まることも、あまり意味がなくなっています。少なくとも若いうちは、年齢や経験ではなく、実績をストレートに評価される国の方が働きやすいし、生きやすい。私の場合、海外出張してる時は、自分でも気恥ずかしくなるぐらい活き活きして、帰国が近づくにつれて、気分が落ち込んだものです。

もっと言うと、組織に所属する必要すらなく、インターネットを上手に使えば、いくらでもビジネスチャンスがある。リアルな店舗なしに、初期投資を最小限に抑えながら、少しづつ商売を広げることもできる時代。

今の若者はたいへんだと言う声も、あちこちから聞こえてきます。何のアイデアもなく、多少のリスクを恐れてばかりなら、確かにたいへん生きにくい時代。最初の一歩を踏み出せるかどうかで、その後の人生がまったく別物になる。今の生活に不満があるわけではないけれど、これから就活をしようという人が、時々羨ましくも思えます。


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