2017年9月10日日曜日

やっぱりやめたネグロス・リージョン


前フィリピン大統領の、ベニグノ・アキノ氏の時代。私たちの住むネグロス島の東西2州を、新しいリージョン(地方)にするという決定がありました。リージョン(Region)というのは、日本でいうと、近畿地方とか関東地方などと同様かも知れません。ただし日本の地方とは違い、単なる呼称ではなく、正式な行政区分。フィリピンには18のリージョンがあり、例えばマニラ首都圏は中央ルソン・リージョン。

以前にも投稿した通り、ネグロスは四国より少し小さい島。中央の山岳地帯が、地理的にも文化的にも、島の東西を二分。四国山地に隔てられて、瀬戸内の徳島・香川・愛媛と、太平洋側の高知が、いろんな意味でずいぶん異なっているのと似た感じです。


ネグロスの場合、まず東西で言葉が違う。ちょっと訛りがキツくて聞き取りにくいというようなレベルではなく、語彙も文法も別もの。もちろん共有するボキャブラリーもあるので、相互理解が完全に不可能ではないけれど、外国人の私が耳にしても、言葉の響きがずいぶん違います。


私の感覚では、シライ市のある西ネグロスのイロンゴ語は、どちらかというと柔らくて女性的。それに比べて東のセブアーノ語は、やや硬質な耳触りです。すごく無理矢理に敢えて言うならば、京都弁と江戸弁みたい。

言語名から容易に推測できるように、イロンゴは西隣りのパナイ島の中心都市、イロイロが発祥の地で、セブアーノは言うまでもなく、東隣のセブの言葉。つまり、山越えが難しく、船での交流の方が容易で、それぞれ対岸の島々との関係が深かったことの名残り。そしてそれを反映するように、西側は西ビサヤ・リージョン、東側は中央ビサヤ・リージョンに所属。

今でも旅客鉄道も航空便もなく、西ネグロスの州都バコロドから、東のドマゲティまで車で5〜6時間の道程。それぞれに空港があるので、マニラやセブなら日帰り旅行ができます。こういう状況なので、「ネグロスアイランド・リージョン」ができても、誰が得をするのかよく分からない。

この発表があった一昨年(2015年)、家内は「どうせ選挙で議員が変わったら、どうなるか分からないよ」と冷笑的でした。さすがにこんな大事が、それほど簡単に覆らないだろうと思っておりましたが、驚いたことに覆ったんですよ。

先日ドゥテルテ大統領が、あっさりと「お金がないから、新リージョンは止める」と宣言。対麻薬戦争やらマラウイでの内戦など、重要案件が目白押しの政局で、ほとんど誰も関心を示さないまま、沙汰止みになってしまいました。こんなんでええんかいな。

ええ加減と言えば、ええ加減この上ない話。それでもよ〜く考えてみたら、金がないから止めると言えるのは、ひょっとすると至極マトモな政治判断ではないかと、思えてきました。原発を1機だけ作って、結局稼働させずに放置したりするフィリピン。これだって、無理に発電して事故を起こしていれば、どんな恐ろしいことになっていたか。

一度決めたことは、どれだけ周囲の状況が変わっても、頑固に変えない(変えられない)我が母国のお役所に比べると、よほど税金を大事に使っているとも言えます。例えば、本四連絡橋や整備新幹線。日本経済絶好調の時代に立案された計画なのに、景気が悪化しようが、飛行機の方が安くなろうが、頑迷なほどに見直しも修正もしない。

初志貫徹とか、朝令暮改を戒めるとか、日本の政治や経営では、最初に決めたことをやり抜くことばかり重要視。やってみてアカんかったら、止めるか、やり方を変えるというのは、ダメなことのように思う人が多い。それって、個人の生き方としても疲れるし、周囲も迷惑だと思うんですけどね。柔軟性がないのは、ちっとも自慢になりませんよ。


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