2016年9月14日水曜日

二重国籍について


自宅ダイニングの窓を飾る日比両国旗

このところ日本では、二重国籍が話題になっています。それも、あまり建設的とは言えないことが発端。渦中の政治家の方の発言内容や進退問題について、敢えて言及はしませんが、こんな取り上げ方で、二重国籍の問題についての深い理解や考察が進むとは考え難い。下手をすると、「二重国籍イコール良くないこと」みたいな、根拠のないネガティブなイメージだけが蔓延するのではと、心配になります。

このブログを読んでいただいている日本国籍の方の中には、配偶者がフィリピン国籍で、お子さんが日比両国の二重国籍、という人もおられると推察します。私の息子も、今のところはパスポート二冊の保持者。やっぱり今回の件は、無関心ではいられない。

フィリピンは、積極的にではないにせよ、二重国籍を認めています。その他には、国によって条件の違いはありますが、アメリカ、ロシア、台湾、多くの欧州諸国なども。これに対して、日本は原則として二重国籍を許していません。ただし、私の息子のように、出生時すでに二重国籍で、相手国(フィリピン)が二重国籍容認国の場合、22歳までその状況を維持できて、22歳到達までにどちらかの国籍を選ぶ、ということになります。(それ以外の事例については、私には知識がありません。)

私は、この規定はとても合理的だと思っています。子供の間は、両親や家庭の事情によって、それぞれの国を頻繁に往き来することもあるでしょう。日本とアメリカのカップルのように、相互にビザなしで渡航できるのなら、あまり問題ではない。しかし、フィリピンから日本は、一時期に比べれば手続きは簡素化したとは言え、まだまだビザ取得は大仕事。急な移動にはとても不便です。

22歳にもなれば、自分の判断で国籍を決められるだろうし、国籍を一つに固定することで生じる制限についても理解できる。諸手続きに保護者の手を煩わせることも、なくなっているでしょう。私としては、息子が22歳になる時に、日本国籍を選んでほしいとは思うものの、そこは飽くまでも本人が決めること。今は日本のパスポートの方が、何かと有利なことが多いけれど、10年以上も先の国際情勢は、どうなってるか分かりません。何より息子が、どちらの文化にアイデンティティをより重く感じるかが、一番大事。

ただ、少々疑問に感じるのは、22歳以降も二重国籍のままでいても、現行法では明確な罰則規定はないし、日本政府側から確認する方法もないという点。要するに事実上「奨励」でしかなく、黙っていれば分からない。嫌な言い方ですが、正直者が馬鹿を見ることになりかねません。そんなザル法だったら、二重国籍を認めればいいと思ってしまうのは、私だけではないでしょう。

今回の問題を受けて、何らかの法改正が行われるのでしょうか? むしろそうなれば、日本の国籍法についての議論が、きちんとできるチャンスです。高齢化、少子化が進む日本で、海外からの労働者や移民の受け入れは、どうしても避けて通れない課題。国境を越えて人が入り混じれば、必ず国際カップルは生まれます。

いまだに私は、日本の知人や友人から「奥さんは、日本に帰化されたんですか?」と訊かれることがあります。日本人と国際結婚の条件が、日本国籍を取得することだと漠然を思っている人が意外に多い。それほど、国籍に関する一般の人の知識は貧弱だということ。

何かの問題が顕在化してから、泥縄式に騒ぐのではなく、今回の出来事を奇貨として、国の将来に役に立つ行動に結びつけてほしいものです。


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